酒道具・美酒佳肴・展観。佳き縁(えにし)を繋ぐ、その徒然。また酒席十二相。その芯は遊び(あすび)の心意気。


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カテゴリ:酒蔵( 1 )

米と水と情熱と。


茨城は陶芸の里「笠間」。
その笠間から水戸線で一つ目、
近隣に奇稲田姫命(くしいなだひめのみこと)を祀る稲田神社のある稲田駅に辿り着く。
小さな駅舎を出て歩くこと数分、江戸末期より酒造りを始めたという磯蔵酒造が静かに佇む。

玲瓏怜悧な風が抜ける如くに、静謐な時間(とき)の流れる蔵。
太い梁が百年以上の歴史を物語る仕込蔵には、酒を醸し出す精妙精髄が潜んでいる。
仄暗い蔵の中に歩を進めれば、
そこには酒造りの要である「米」「水」「情熱」が象徴的に表されている。
井戸は御影石の大地をくり貫いた深井戸。
その石に磨かれ染み出す水は「石透水」と名付けられ、
磯蔵の酒を生み出す原点となっているのだ。
其処彼処に酒蔵独特の香りが漂う中、
百年間酒造りを守り続けてきた風情には陰影礼賛とも云える居姿があり、暫し魅せられる。

熱き想いが蔵主には凛として在る。
それは水から米、造りに始まり、味、香り、色、さらには流通に至るまで、
真摯で確固たる心意気が溢れているのである。
豪放にして繊細なその風貌と心配り。
そして、その想いを〆るものはやはり「人」なのである。
「酒造りは一期一会の積み重ね」を芯に置き、
日本酒の魅力を伝えるべく日々造りに勤しみ、出会いに奔走しているのだ。
加えて、蔵には試飲のできるきき酒処があり、
また「はなれ」での宴も設えることができるという。
日本酒を楽しむに欠くべからざるを、これまた外さない。
こうした造り手としての深く真っ直ぐな姿勢と、
酒膳を楽しむ遊びの心が溢れていることが
磯蔵の酒の魅力を揺るぎないものにしているのである。

そうした想いから造られた美酒の数々。
書家幸義明氏の筆になる大胆且つ絶妙な意匠が、訪れる悦楽の一献を期待させる。
「山」の一文字を配した「稲里純米」は深く濃厚でありながらも後口の洗練が堪らない。
「天」の字を配した「稲里大吟醸・山田錦」は素材と造りと人の和を感じずにはいられない、
まさに天の恵み。
一方「稲里大吟醸・五百万石」は食中の酒として秀逸なる味わい、
ふわりと感じる旨味はまさに「風」の如く。
ほかにも「雲」「空」「土」といった一文字をその名とした魅力ある定番酒が揃う。
ぐい呑みを傾ければ、呑み手の心を奮わす妙なる旨さ。
ここに日本酒の醍醐味が凛々しく存在する。

蔵主の磯貴太氏は幼い頃から井戸水に慣れ親しんでおり、
水道水を使ったことが全くないと云う。
敷地内には裏山、梅林もあり、こうした自然の中で育まれた氏の心意気は
様々な『縁(えにし)』を重ねて、
「稲里」それぞれの美酒に昇華しているのである。

「種を蒔かなくとも稲が生えた」と伝えられる御神田がある稲田神社、
それを由来とする稲田の地区は「稲の里」と呼ばれた。
まさに美酒「稲里」が生まれるべく在る地なのだ。
その醸し出す一献に乱れのあること、是無く。

毎春に開催される酒蔵での祭り。
その熱気は蔵主磯氏の、一期一会の想いを具現する「縁(えにし)」広がる一日となる。
氏に関わる数々の人が、この日のために力を、想いを持ち寄る。
酒を酌み交わし尽くす濃き一日である。



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by drink-style | 2010-04-27 12:29 | 酒蔵